東陽片岡作品 名語録 fire a surface-to-air missile, from nose
 
 
人生の甘さ辛さが全てこめられている東陽作品(言いすぎ)。
当然ながら、作中の登場人物はさまざまな名言を口にします。

ここでは、私が気に入った名言たちを紹介していこうと思います。
 
 
「アメリカで通用しなかった奴が、日本に来たってダメさ。逆も言えるけどな」
「段ボール低国の天使たち」・「シカゴ・ブルースのブルース」より
 
祖国で夢破れ、日本に来たアメリカ人に兄貴が言ったセリフ。
日本でもギャンブルにはまり、路上生活となった彼が「デモ、ワタシアキラメマセン」と言うのを、鼻くそをほじりながら一刀両断です。
 
アメリカでだめだった奴が、ただ日本に来たからといって成功することがあろうか。厳しいながらも一理ある兄貴の言葉。
 
でもその後、「この番号に電話すれば、流しのオッさんが商売の仕方を教えてくれるさ」とメモを渡す兄貴。
ただ人の夢をこき下ろして終わる男ではなかったのでした。兄貴カッコイイ。


「やべえ、エンジンオイルがきれてきた。焼きついちゃう。」
「うすバカ二輪伝」・「けむりと涙で酔いたいの」より
 
これは、「バイクを愛するあまり、いつも店内でバイクを空ぶかししている」という変わり者の焼き鳥屋が言ったセリフです。
ヤマハのバイクを愛し、「こらっ、スズキの話をするんじゃねー、ブァーローッ!!!」とお客を怒鳴るような彼が上記のようなセリフを吐くところに、東陽作品に出るおっさんたちの可愛さが表現されています。


「何言ってんのよ、偉そうに。
オートバイは買ってもらったんでしょ、お母ちゃんに。」

「うすバカ二輪伝」・「沖縄デー斗争の夜」より
 
「俺はこのバイクで機動隊と戦う!」と学生運動に燃える男に、同棲しているお姉さんが微笑みながらぶつけた一言。
東陽作品では、女性はいつも男性より強い。
この二人を主役にしたお話は他にも数編あり、お姉さんはいつも、男のお題目ばかりの人生を一刀両断します。


「もしかして、
俺たちってカッコいいかもしれないな。」

「お三十路の町」・「夕日のララバイ」より
 
妻に逃げられ、赤ん坊を背負いながら働く男。いつも訪れる川原の土手には同じように赤ん坊を背負ったヤクザ風の男がいる。
態度はそっけないが、なじみの顔のようだ。「なんですか? あいつ。」と聞く若い衆に「ばか、友だちだ。」と言ってくれる気持ちが温かい。
そして帰りにもう一組、赤ん坊をと年長の子を連れた中年の男とすれ違って、上の一言だ。
似たような境遇の人がいるから心強い。安心する。決して前向きではないかもしれないが、別にいいじゃないか。
仲間がいて、それが明日の活力になる。親はなくても子は育つが、飯代くらいは稼いでやらにゃ。


「おいバカ、元気かおい」
「なんだおめえ、生きてたのかよ」

「段ボール低国の天使たち」・「年の瀬エレジィ」より
 
年末に体調を崩したトメさんを、兄貴が見舞いに行ったときのひとコマである。
 
見舞いに来ておきながら「おいバカ」と声をかける兄貴と、「生きてたのかよ」と一瞬で切り返す病床のトメ。
これでいいのだ。「早く元気になってね」なんて言葉は、段ボール低国には似合わない。見舞いに来てくれたという事実が、能弁に語っているではないか。
 
ちなみにこの後、トメさんは自分の過去を語りだすのですが、兄貴は「向こうで一杯やるか」と飲み仲間のところへ去ってしまいます。
ツライ過去やキビシー思い出なんて、みんな持っている。そんなものをいちいち聞いてもらえるほど、生ぬるい関係ではないのでありました。
 
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